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まずは旧学制から話しましょう。旧制では小学校の後の進路先は次の二種類が考えられました。一つは旧制高校、旧制大学へと進学するコース。もう一つは職業人となる実業学校コースです。この実業学校コースには工業、農業、商業、師範、商船がありました。そして、この上級学校として高等工業、高等農業、高等商業、高等師範、高等商船がありました。この学校のレベルはだいたい旧制高校と同じでした。そして、ここから旧制大学に進学まできましたが、大体の卒業生は卒業後は就職しました。ところが、昭和18年に実業界学校の一種だった師範学校が高等師範教育機関に昇格しました。昇格理由は師範学校は小学校の教員養成機関でしたが、旧制中学、高等女学校、師範学校の教員養成機関である高等師範学校の卒業生と比較して給与等の待遇があまりにも差がありすぎるとのことでした。実際、市販卒の小学校教員と高等師範学校卒の旧制中学教員では初任給で2倍以上の差がありました。もっとも、当時の小学校教員は今でいう高卒で、高等師範学校卒は大卒でしたから、給与や待遇が違うのは当たり前でした。ですが、それを少しでも是正しようとして、昭和18年に昇格させました。この時に、東京に高等師範学校（現筑波大学）と師範学校（現東京学芸大学）と、東京女子高等師範学校（現お茶の水女子大学）と女子師範学校（現在東京学芸大学）でした。本来なら、東京に師範はそれほど必要なく、高等師範に師範学校が吸収されればよかつたのですが、高等師範学校は嫌がりました。なぜなら、もともと師範学校は高等師範の下部組織であったこと、さらに当時の高等師範は学科によっては東京帝大に次ぐレベルの学校とみなされていたからです。そのため、東京に二種類の師範学校ができてしまったのです。もっとも、この後すぐに敗戦になり学制が変わりました。学制が変わった時に東京高等師範学校は廃校になり、東京師範学校は東京学芸大学になりました。このようにいうと、東京高等師範学校より、東京師範学校の方が優秀だったから高等師範が廃校になり、東京学芸大学が大学に昇格したのではと錯覚を起こしがちですが違います。実は、東京師範が高等教育機関になる前に、東京高等師範学校の上級学校として東京文理科大学というのがありめした。これはもともと東京高等師範学校にあった専攻科が大学に昇格したものです。そのため、すでに文理科大学があったことから高等師範を大学に昇格させる必要がなく廃校にしたのです。また、女子に関しても東京には高等師範と師範学校がありましたが、東京女子高等師範学校には男子の高等師範学校のような女子文理科大学がなかつたことから大学に昇格しましたが、女子師範学校を吸収しませんでした。そして、東京第一師範学校と第二師範学校、東京第一女子師範学校と、第二師範学校を吸収統合したのが東京学芸大学です。ですが、東京師範学校が、高等教育機関になただ年月も短かったこと、また当時の学問レベルが低かったことから不適格として、学校を追われた教員も少なくありませんでした。中でも、小学校の児童用の書き方や読みかたと言った科目の教員が追われました。皮肉なことに、その穴を埋めるように採用されたのが旧制中学の教員でした。このため、師範学校は他の旧制大学、旧制高校、旧制実業専門学校を母体とする学校よりも1段階下に見られることになりました。事実、東京ではと東京文理科大学が戦後他の実業専門学校を統合して、東京教育大学となりましたが、東京師範学校を統合した方は東京学芸大学となりました。後に、学際的な発展を考え東京教育大学は筑波に移転し、筑波大学と名称を変更しましたが、東京学芸大学は東京教育大学と名称を変えることなく現在に至ってます。実はこの時期、他の大学は学芸大学という名称から教育大学と名称変更をしていました。例えば、現在の大阪教育大学や愛知教育大学、京都教育大学はもともとは学芸大学という名称でしたが、いまでは教育大学となっています。では、なぜ東京学芸大学は東京教育大学になれなかつたのか。一つにはすでに東京文理科大学が他の実業専門学校を統合して、新しい大学になった時に「教育大学」という名称を使っていたこと、もう一つはやはり筑波の前身の東京高等師範学校の方が東京学芸大の前身の東京師範学校よりもステータスが上であ立たことによります。もちろん、長い年月が経ち、今では東京にある教育学の本山が東京学芸大学と考えている人もいますが、国の研究の重点化政策には筑波大学は載っていても、東京学芸大学は載っていないこと、また学問レベルでも筑波の方が上で学芸大学の方が下であること、さらに今でも旧帝大や旧制高校、旧制高等師範とか言われる時にに、旧制師範学校は旧制中学と同等と見られるため、どうしても格下に見られるのです。実際、旧帝大、実業専門学校「（一橋、東工大、筑波、東京外大、お茶の水、東京農工大、東京海洋大学）と比較するとどうしても下に見られます。なお、東京海洋大学の母体は東京商船大学と東京水産大学ですが、格としては東京商船大学の方が上でした。今は水産の方が勢いがあり、商船の方が衰退してしまったので、この辺のことはわからなくなりつつありますね。以上のことから、今でも東京学芸大は他の東京帝大や第一高校、府立高校、及び実業専門学校を母体とする学校からは格下と見られています。